東京Vの練習取材
昨日気になったので、今日は東京Vの練習を取材。練習はフィジカルだけで終了。インターバル走の途中で平本選手が「よ~し、ここからいい記録出すぞ!」と言いつつ、ちょっとだけ遅れて走り出したり、「ラスト!」と叫んで柱谷コーチから「ラストならいいんだけどね(笑)」と突っ込まれたり。ただし、全体的に元気はなかった。それはそうだろう。
終了後、都並コーチが引き上げ際に「今日はどうして?」と聞いたので「みんなしょげてるんじゃないかと思って顔を見に来た」と言ったところ、ラモス監督が残ってそのまま2時間近く話し込んだ。2時間もあったので、JSLの頃の話(日立やフジタ、古河、日産のサッカーの話)や、自分のケガの時の話(お医者さんから他の患者に会わせてもらってお前なんかまだいいほうじゃないかと怒られた話)、日本に来たばかりの頃陰口を叩かれた話(肉離れを「さぼり」と言われて、どんな意味か分からなかったけど、松木さんや小見さんがそんな陰口を叩くヤツとのケンカを買ってくれていた話)、京都時代の話、今のチームの話など、内容は盛りだくさんだった。その中で、ラモス監督が経験したサーフィンの大会の話。
ハワイでサーフィンの大会があった時、ブラジル出身の選手が優勝候補だった。当日の海は荒れ模様で一番大きければ7メートルぐらいの波が出そうだった(と、ラモス監督は大阪出身でハワイに住んでいる友だちからコンディションを教えてもらった)。残り時間が少なくなってきたが、あまり大きな波が来ない。そのうち5~6メートルぐらいの高さの波が来た。ライバルはその波に乗ったけれど、ブラジル出身の彼は見送った。そして、その後大きな波は来ることなく、優勝候補は敗れ去った。大会後のパーティで彼は「絶対に波が来ると思った」と涙を浮かべた。
「だからね、ヴェルディも来た波を大事にしなきゃならないんだよ」
ここからは僕の感想。ラモス監督にも伝えました。東京Vが今年苦戦しているのは偶然ではない。「読売」カラーを捨ててでも勝たなければならないのなら、ラモス監督の必然性はない。ラモス監督ならではのチームを作ろうとするのなら、去年までの主軸が抜け、チームを大幅に作り直しているのだから、1年で結果が出るのは稀で、通常は3年周期で考えなければならないはず。だからこの状態で今年運良く昇格しても、来年はすぐまた降格するのではないか。チーム作りを長期でやって、強かった頃のサッカーを見せられるようにならなければ、単に勝てばいいというだけなら、東京Vの観客が増えることはないはず。
「でも、オレはね、絶対に自分からタオルを投げないよ。オレは今でも信じてるよ。絶対にやってやるよ」
もう誰も残っていない練習場はすっかり暗くなって、それでも話は尽きなかったけど、監督は「今日は来てくれてありがとう」と言うと、すっかり冷えきった手でしっかりと握手をすると、昔どおりの明るい笑顔でロッカールームに消えていきました。クラブハウスを出ると、そこにはまだラモス監督を一目見ようとするファンが8人。あの人たちの気持ちはちゃんと伝わっていることでしょう。