謙虚な公式会見
12時30分から前日公式会見。オシム監督と遠藤選手が出席する。午後はスタジアムを使って公式練習。
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公式会見でベトナムのリードル監督はとても謙虚なセリフを選び続けた。
「ベトナムにとって歴史上最も難しい試合になる。30パーセントがオフェンス、70パーセントがディフェンスになるだろう。勝点3を取ることは夢で、引き分けすら難しい相手だが、サッカーには何が起きるか分からない。今日の練習場所を変えたのはセットプレーの練習を秘密でやりたかったからだ。ベトナムの大声援は助けになるが、日本の選手は何人もヨーロッパでプレーしているしゲームそのものの内容を助けてくれないだろう。高原はとても危険だけど日本は彼だけではない。高原を特別意識すると我々のシステムを壊してしまうと思う」
オシム監督の会見の際には壇が見えなくなるくらいのカメラマンが詰めかけてフラッシュを焚いた。
オシム監督は最初こそ慎重に言葉を選んだ。
「まずはグループリーグを通過することが大切で、何位になるかはその後に考えなければならないことです。私の国のことわざに、まだ産まれていない子ウサギを森の中に探しに行くな、というのがあります」
こうやって監督がはぐらかすようになってきたというのは余裕が出てきた証拠だろう。
もっともオシム節も忘れない。けがの選手の具合について外国人記者から質問が出ると、
「ドクターはこの会場にいますか。それはドクターの領域です」
といつもどおりの答えの後に
英語で
「イッツ・ノット・マイ・ビジネス」
と付け加えた。食い下がる記者が
「ではイエローカードについてはどうか」
と聞くと
「イエローカード対策班というのがあります。イエローカードをもらった選手は名乗り出るようにと言ってあります」
ここで一同大爆笑。オシム監督もちょっと愉快そうだった。
ただ、最後にちらりと本心を覗かせた。
「ベトナムについて語ることは、ただでさえモチベーションの上がっている相手をさらに張り切らせることになります。そういうことはしたくない」
オシム監督の緊張もほぐれてきているようだが、相手に対する警戒は怠っていない。
その後、お土産屋さんが並ぶストリートに行く。道にたくさんの売り子さんがいて、こっちの手を引っ張りながら話してくる。英語で話しかけてきたり、片言の日本語になったりするのだが、日本語になると急に値段が上がるので英語だけで対応した。こっちも拙い英語だし、あっちも拙い言葉なのでだんだん相手も参ったという感じになったようだ。