雨のウィーン

日本代表に遅れてオーストリーを目指す。オーストリー戦の前日公式練習から取材し、スイス戦まで。困ったことに、試合会場のクラーゲンフルトはほとんど情報がない。しかも手配が遅れたものだから、飛行機だけは確保できたが、クラーゲンフルト市内の安いホテルはどこも満室で、隣のサンクト・フェイトに宿を取る。サンクト・フェイトはどんな観光案内にも出てこなかった。どうやって宿まで行くか、現地で勝負するしかない。ともかく、旅の初日はウィーンまで行く。

オーストリー航空のエコノミークラスは、これまで乗った飛行機よりもちょっと狭かった。リクライニングもごくわずかしかできない。一方で食事の量は多い。メニューもおしゃれだ。

だが、ともかく困ったことが出てきた。トイレの数が少ないのだ。エコノミー1ブロックの135人に対して用意されているブースが2つだけ。ビールを飲んで体内の水分の循環がよくなると、頻繁にトイレに行きたくなるのだけど、いつも4~5人は並んでいる。金髪を引っ詰めにしていたキャビン・アテンダントはヒステリックに「通路に並ぶのは止めて席でシートベルトをしなさい! 何かあったらあなたたちの責任だからね!」と叫んでいたが、そりゃむちゃなお話。しかもみんなが並んでいるトイレの横にキャビン・アテンダント専用のトイレが設けられていて、乗客は使えないのだから、誰も話を聞くわけがない。アジアカップのときは乗る飛行機毎にキャビン・アテンダントの女性を写真に収めたが、今回は怖そうだったので断念した。

ウィーン近郊にある国際空港に到着すると、鈍く曇った初冬の風景が出迎えてくれた。気温は9度。2カ月前、アジアカップでベトナム入りしたときも雨だったが、そのときは気温40度。人間寒暖計状態だ。

クラーゲンフルトまではここからさらに1時間のフライトだが、この日はもうすべて満席で、このままウィーンに1泊することになっている。成田空港で買ったガイドブックを読んでいると、空港から市内までのタクシー代が30ユーロから40ユーロと書いてある。今日のレートが161円なので約4800円から約6800円だ。高い。

ユーロ節約のため地下鉄を乗り継いで市内を目指す。空港駅は暗くてジメジメしていたが、分かりやすい記号のおかげでちゃんとキップが買えたし、乗り継ぎもスムーズにできた。
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座席はゆったりしていて心地いい。
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乗り継ぎの前にはゲートの脇に設置してある機械で当日の日付をチケットにプリントする。
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これをしていないと、電車の中で車掌に見つかったとき罰金を取られるらしい。一本乗り過ごして乗客を観察し、何となくシステムを理解して乗車した。
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けれど、こんなときって車掌にあったことがない。

ホテルは中心街にあった。三つ星の小さなホテルは小さな路地にひっそりとたたずんでいてロビーと呼べる空間もない。エレベータは剥き出しのクラシカルなタイプでちょっと怖い。
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ともかく、ちゃんと浴槽が備わっているのはありがたかった。19時にチェックインするとすぐ外出してみたのだが、鉛色の町には人気も少なく、すぐ近くにあるはずのオペラ座もどれか分からない。 かつてのヨーロッパの芸術の中心地として期待したが、わずかな滞在時間では雰囲気を味わうこともなかった。

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しかたなくガイドブックに「メニューには写真が掲載されていて外国人旅行者も注文しやすい」と書いてあった店に行く。座ってメニューが出てきたものの、全 部のメニューに対して写真は1カットだけ。
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仕方がないから店員に話を聞き、オススメの「チキン1/2」とドラフトビール小を注文する。機内に続いてここで も一品当たりの量が多かった。

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食べ過ぎ。ホテルに帰ってばったり。深夜、慌てて起きてインタビュー原稿のまとめをする。

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