国境を越えた連帯意識が芽生えてきたかも

6日の2時30分に午前中のトレーニングが中止となった。午後はスタジアム横の練習場でトレーニングした後にスタジアムを使って公式練習。暑い中、ヘビーなメニューだ。カタールのテレビ局も取材していたが「3-1で日本が勝つ」と少々弱気のコメントを残す。
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公式練習には日本以外の国のメディアもみんな来ている。
webで記事を書いているベトナムのさわやか君。
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去年までカタールリーグでGKをしていたというカタール人のさわやか君。
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メディアセンターは奥まって分かりにくい場所にあった。貨物用のエレベータで3階まで昇らないと辿り着けない。施設面は不安だったが、今日やっと無線LANが開通したらしいということで一安心。椅子はまだビニールが掛けてある新品だった。

記者室から記者席へは階段を2階分上がる。記者席には小さな机とレジャー用のようなプラスチックの椅子が並べてあった。陸上競技用トラックがあって見にくそうだ。当初記者席は風が吹き抜けて気持ちよかった。特に一番上は全体像がよく分かる。ところが問題発覚。試合が始まると、どこかの冷房のスイッチが入り、最上段の記者席には室外機の温風が吹き付けてくる。だけど良好な視界には代え難い。満席にはならないだろうから、試合中は熱風を我慢して最上段で見ることにした。あとでピッチに降りてみると、芝生の上はどんよりとした空気が漂っていた。風が吹き抜けないようだ。

オシム監督の公式会見が始まった。暑い中での監督の長袖姿が目立つ。もしかすると体調を崩しているのかもしれない。

応対は相変わらずシニカルだ。だが余裕を持って相手をかわしているのではない。監督に緊張感がありありと見える。

公式会見では英語での質疑応答になるのだが、オシム監督は英語が分かるはずなのにいちいち通訳を通す。その間に考えている。一度通訳が訳していたら、監督が手で遮って質問者の英語を聞いていたので、理解できていたのだろう。

オシム監督は会見が進むにつれて落ち着いた様子だった。日本で働く外国人記者が「一次リーグで敗退したら辞めるのか」と聞いたのも想定内だったはず。はぐらかした答えは落ち着き払っていた。

この会見の一番のハイライトは日本人の雑誌記者が
「3連覇に向けて気持ちが高まっていないように見える。選手からもそういう声を聞く」と聞いたとき。
急にオシム監督が日本語だけで答えるように通訳に言った。
「私はこれから日本語だけで話したいと思います。日本のジャーナリストは日本の取材をよくしているのだから、日本代表がどんな状況がよく知っている専門家です。どんな準備をしたか、いつ到着し、何をしたかを知っています。質問自体はいい質問とは言えない。この質問はとてもデリケートです」
つまりチーム状態があまりよくないのを分かっているが、それを他の国のメディアの前で暴露するなと言うことだ。
途中でカタールのメディアから「イングリッシュ!」という声がかかる。オシム監督は慌てて英語で当たり障りのない答えを追加してごまかした。

オシム監督の会見終了後、日本人記者たちがこぞってアジアサッカー連盟に対して日本語で別会見してほしいと要望を出していた。確かに一番多いメディアに対してやってほしいかもしれないが、時間を確保するのも難しそうだ。練習後の囲み取材がしっかりできれば解決するはずだが、オシム監督は就任当初から質問拒否に近い受け答えをする。これではオシム監督は本当は何を言いたくて何をしようとしているのか、記者には伝わらない。

緊張感があった日本の会見とは対照的に、ムソビッチ監督の会見はとても和やかだった。しかもカタールの記者の質問にはユーモアのセンスがある。
「日本人プレスはとてもストレートな質問をします。日本人記者たちは、明日のスタメンは誰ですか、という質問をするのです。それに答えることで日本人を満足させてあげてくれませんか」
監督は笑いながら
「それはとてもデリケートだけど、いい具合に私たちにはけが人がいる。明日の朝、状況をみてから決めるので今は答えられません。ただ、セバスチャンはプレーできると確信しているんですけどね」
と答え、うまく切り抜けていた。

会見終了後、監督は壇上でカタールメディアたち全員と一緒に写真を撮影していた。降りてきた監督と目が合う。すると監督が握手のためにすっと手を伸ばしてきた。
「あなたはメディアととてもいい関係を築いていらっしゃいますね」
「だって僕はここに長いからね。第2の故郷だ。彼らも僕がそう思っているのを知っているんだよ」
「残念ながら僕たちはオシム監督といい関係を築いていません」
「時として監督とメディアが知りたいことは別ということがあるんだ。だけど日本が勝ち進めばきっとよくなるさ」
そういうとムソビッチ監督は微笑みを絶やさないまま部屋に消えていった。

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