ヴァイッド・ハリルホジッチ監督解任に思う

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が指向した「縦に速いサッカー」は、確かに日本の問題点を解決するかに見えました。

ボールを安全につなぐばかりで前に運べず、相手が陣形を整えた中に攻め入っていくために、ボール保持率は高くてもチャンスが生まれないというのは、ブラジルワールドカップのときのデータに表れていました。

もっとも、アジアの中の戦いでは相手の形が整わないうちに攻めようと思っても、引いてくる相手に対しては有効ではありません。そこで「アジアを勝ち抜くサッカー」「ワールドカップでのサッカー」の2つを用意したのが岡田武史監督で、アジアで勝ったサッカーをワールドカップで実践しようとしたのがアルベルト・ザッケローニ監督だったと考えています。

対して、ハリルホジッチ監督はワールドカップでの戦いを意識した戦術をずっと採り続けました。それで予選を通過し、戦術が浸透し、ワールドカップで躍進できれば素晴らしかったことでしょう。

苦労しながらも、まずは予選を突破しました。次は戦術がちゃんと浸透し、ワールドカップで通用するレベルにまで引き上げられたかというチェックがなされなければなりません。それが去年と今年のヨーロッパ遠征でのポイントだったと思います。

ブラジル、ベルギーには通用しませんでした。もっともこの2カ国に通用しなくても仕方ないと言える相手国のレベルです。ところがマリ、ウクライナに通用しないとなると、これは一気に暗雲が押し寄せたと言えるのではないでしょうか。

監督がやりたかった戦術が今の選手たちでできなかったのか、それとも選手たちには合わない戦術だったのかはわかりません。ハリルホジッチ監督はトレーニングをほぼ公開しなかったので、練習でもできなかったのか、練習ではできているのだが試合では出せないのかが判断できないからです。
 
ハリルホジッチ監督にとって不幸だったのは、この4年間で本田圭佑を凌駕しそうな選手が出てこなかったことだと思います。パラダイムシフトが起きるのが理想でしたが、そんな選手が見つからなかった、見つけられなかったということで、手詰まりになった部分はあったはずです。

ただ、原因は何にせよ、チームがうまくいっていないのは見て取れました。そして監督交代という決断がなされた以上、少しでもよくなってほしいと思います。

また、田嶋幸三会長が直接ハリルホジッチ監督に解任を伝えにフランスまで行き礼節を尽くしたこと、監督を交代させないという最も非難が少なくなるだろう無難な判断をしなかったことは、私は評価すべきだと思っています。

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