古くからの日本サッカー・Jリーグ・鳥栖・横浜FCファンは必読でしょう

日本サッカーに捧げた両足 [ 木之本興三 ]
日本サッカーに捧げた両足 [ 木之本興三 ]

Jリーグの元専務理事、木之本興三さんの自伝です。謙虚に大変なことを語っていらっしゃいます。病気が悪化して、現在は両足を切断なさいました。サッカー選手が足を切断することの辛さすら日本サッカーのために我慢したというストーリーです。

実は木之本さんとはいろいろな接点がありました。
最初は学生時代。当時、JSLの事務局長だった木之本さんに「なぜ日本にプロサッカーができないのか」という話を聞きに行きました。
「だってなぁ、企業の福利厚生でやっているのにプロになれるわけないだろう」
ところがその裏で、プロサッカーの準備委員会は動いていたのです。
「そりゃそうだ。どこの馬の骨ともわからないヤツに本当のことを教えるわけがない」
かなり後で木之本さんはそうおっしゃって笑っていらっしゃいました。

次は鳥栖フューチャーズの存続運動のとき。
佐賀まで現状を視察に来た木之本さんに佐賀の現状をアピールしました。
「なんか売り込んでくるヤツがいるなぁと思ったよ」
とこれも後から聞きました。

そして木之本さんが専務理事の時代。ある出来事の裏を探っていた僕は、一番何でも知っていそうな木之本さんに真相を聞きに行きました。木之本さんの部屋には「立ち入り自由」と書いてあったので、取り次いでもらったらすぐ会えました。ただ、当時は(今もかな)僕も少々血気盛んなころ。
「あの問題については、ここまで調べました。どうかここから先を教えてください。教えてもらえないようだったら、とにかく僕の知っていることを書きます」
いきなり突っかかられて木之本さんは怒りました。
「ふざけるな。お前が知ってることは全体の半分だ。書いたら恥をかくぞ」
「恥をかいてもかまいません。でも、書いたことで必ず誰かが続きを探ります。そうして真実を残していくのが僕の仕事です」
「青臭いコト言ってるんじゃない!」
と、ここでスタッフの人が入ってきて、木之本さんへの次のアポイントの人が待っているのを告げたので、話は終わりました。ただ、このときの木之本さんはすごい形相で僕をにらんでいました。

ところがその翌日、Jリーグの何かのパーティがあって、その取材に行ったら木之本さんからいきなり呼び止められました。前日のことがウソのような笑顔でした。
「おい、森、お前よく調べたな」
「ありがとうございます」
そう言いながら、懐柔したいのだろうと踏んでいました。 
「昨日も言ったけれど、お前が調べたのは真実の半分だ。残りを教えるよ」
「え? 本当ですか?」
「本当だ。だけど、書くな」
「いや、聞いたら書きますよ」
「聞いても書くな。今は書くな。もし書いたら壊れる話だ。壊れたら日本のサッカーのためにならん」
木之本さんはずっと笑顔です。前日の顔よりそっちのほうが迫力がありました。 
「……いつまで待てばいいですか」
「それはすぐにわかる。だからちょっと待ってろ」

結局、僕は木之本さんから話を聞いて、書く時期を待ちました。

この本に書かれているある時期に、僕と木之本さんとの間でそんなやりとりがありました。今でも話しかけてくださるのはありがたいことです。本当に怒ってたモンなぁ~。 

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