川崎vs名古屋 そこに大久保選手の優しさを見た
川崎vs名古屋は、「オープン」な戦いになりました。その原因を作ったのは名古屋。中盤でのミスと外国籍選手のポジショニングの曖昧さから川崎の良さを引き出してしまいました。
この日の川崎は前線からプレスをかけ、中盤でボールを奪うと一気に前線へパスを送ります。得意のショートカウンターで矢島選手と闘莉王選手のマッチアップを作り出しました。特に素晴らしかったのは中村憲剛選手。今季はコンディションが整わなかったり、負傷で欠場したりとあまりいいパフォーマンスを見せていなかったのですが、復調し好パスを供給していました。
ただし、名古屋も個々人の力は疑いようもないくらい高く、多少の曖昧な攻めでも一気に得点の香りが漂うくらいの場面まで作ってしまいます。まとまり感は欠いたものの、それでもゲームを作ってしまうという強さは魅力でした。
前半45+2分、ついに均衡が破れます。先制点を奪ったのは川崎。右からのクロスを小林選手が体をひねりながら後方に流し、それまで難攻不落かと思われていた楢崎選手の砦を崩しました。後半、名古屋は藤本選手を投入し、前線へのパス出しをうまくまとめ始めます。さらに玉田選手が攻撃にスピードを加え、川崎DFを疲労させました。
パワーと技をミックスさせた名古屋の攻めが83分に実ります。FWが落としたボールを藤本選手が右足のコントロールショット。本人は「偶然です」と謙遜していましたが、見事なカーブが元同僚の西部選手をかすめてゴールに描かれました。
どちらも迫力のある攻めを見せた試合はドロー決着か、と思っていたのですが、最後に等々力らしい素晴らしい一発がホームチームを待っていました。87分、左サイドでドリブル突破をしかけていたレナト選手が中央の山本選手へ。山本選手が右足を振り抜くと、押さえの利いたレーザーショットが名古屋ゴールへと飛び込みました。これで2-1、そのまま川崎が勝利を収めました。
ところで、この試合で僕が感心したのは川崎の大久保選手の人の良さ。というのも、大久保選手は何度もドリブルで仕掛け、突破するかと見せかけてラストパスを出していました。出された小林選手たちが失敗しても、またその次もパスを出してあげるのです。決められない見方に業を煮やして自分で突破するのではないか、と思ったのですが、そんな場面はありませんでした。
「自分にマークが来ていて、シュートを打っても相手に当たるかと思っていましたからね」と大久保選手は謙虚に語ってくれました。でも去り際に「ただ、最後の場面は自分でいけたね」とちょっとにやり。わかっていても、走り込んできた大島選手を生かしてあげたのでしょう。こういうことが、大久保選手が早くチームになじめた要因なのかもしれません。