FC東京vs鹿島 激闘の中にも一服の清涼剤・そしてあの人も
前節で川崎に10人ながら1-0と勝ったFC東京が、最下位に低迷する鹿島を迎えました。もっとも、鹿島は順位どおりの戦いぶりではありませんでした。やはり鹿島は鹿島。きっかけ一つで急浮上しそうです。
鹿島が闘争心を前面に押し出してプレーしてきました。ボール際の厳しさは今季取材した試合の中でも一番でした。FC東京は川崎戦同様個人がポールを保持する時間を短くして攻め込みますが、最後に崩すことができません。鹿島は中盤から飛びだすタイプの選手がいないため、最後に崩す場面で人数が足りません。緊迫感がスタジアムに満ちます。
権田選手が興梠選手との接触で負傷退場するというアクシデントも場内の空気を寄り張り詰めたものにしました。また、両チームともバックパスをGKが手で取ったという判定を受け、このうち鹿島が取られたファウルがFC東京の同点ゴールに結びついてしまいました。しかも、鹿島の選手が早く動いたということでやり直しになるという、より興奮度を高めるような出来事もありました。
試合はロスタイム、ジュニーニョ選手のシュートがこぼれるところを遠藤選手が詰めて鹿島が決勝点を挙げます。ゴールが決まった瞬間、鹿島のベンチがみんな飛び出したのはまるでカップ戦の決勝のようでした。それだけ勝ちがほしかったのでしょう。主審の演出があったとはいえ、こんな死力を尽くした戦いはいつ見ても迫力があります。
ところで、ややもするとギスギスしているように思えるこの試合の後半、石川選手が鹿島のペナルティエリアの中で接触し、倒れました。判定はノーファウル。FC東京のファンとしては盛大なブーイングをレフェリーに浴びせたくなるところでしょう。
ところが石川選手は倒れたまま、倒した選手に手を伸ばします。そして相手はその手を引っ張り、石川選手を助け起こしました。もしかすると、石川選手が倒れたままファウルをアピールしたほうが、そして場内のブーイングを引き出したほうが、その後のジャッジに影響を与えることができたかもしれません。当然、石川選手もそんなことは知っています。ですが、そうしなかったことで、僕はこの脂っこい試合の間に清涼飲料水を飲んだ気がしました。思わず「いいヤツだなぁ」とつぶやいたら、周りの記者たちも頷いていたので、みんなそんな気持ちだったのだと思います。
試合後、石川選手にその時の話を聞いてみました。
「僕は相手にいつもリスペクトを持たなければ行けないと思っていて、でも今日の前半は相手に怒ったりして、それができませんでした。だからあの場面では手を伸ばしたんです。そこだけ見るとよかったかもしれませんが、前半怒ったのでまだまだですね」。うーん、どこまでいい人なんだ。本当にグッド・ガイでした。
さて、この試合にはNHKの「サタデースポーツ」「サンデースポーツ」のキャスターとして大ブレイク中の山岸舞彩さんも取材に来ていらっしゃいました。熱心な取材姿勢はJリーグタイムのときからまるで変わりません。そして最近は放送用の原稿を自分で書くこともあるのだとか。今シーズンはよくサッカーの取材にいらっしゃる予定ということなので、ますます放送が楽しみです。
いつものようにとびっきりの明るい笑顔でした。
小ネタ1)
鹿島のジュニーニョ選手は途中出場。歴代の川崎の監督は、こんな贅沢なジュニーニョ選手の使い方をしてみたかったことでしょう。
小ネタ2)
川崎のときはあれほど服装にこだわっていたジュニーニョ選手でも、さすがに鹿島ではみんなと同じジャージ姿でスタジアム入りしていました。帰るときに見ると、背中にはかわいいリュック。だけどもちろん高級フランスブランド。あれ? 川崎にいたころはイタリアブランドばかりだったような気が……。
小ネタ3)
雨の味の素スタジアムでは、取材ノートをiPadで取ることができませんでした。だって記者席はどこもみんな濡れまくり。屋根があるというのと、濡れないというのは別定義ですね。