クラブライセンスは両刃の剣になりかねない
クラブライセンスの取材に行ってまいりました。記者会見には約60人の報道陣が集まり、関心の高さを伺わせました。
これが配られた資料の一つ、「Jリーグ クラブライセンス交付規則」で、ご覧の通り今年の2月1日から施行されます。
このクラブライセンスの発祥はドイツで、それがFIFAに広がり、そこからAFC、日本と降りてきています。AFCは2010年3月に2013年シーズンからACLに参加する場合、AFCの定めるライセンスを持っていないと資格を与えないと決めました。
ライセンスを判定する5つの項目は「競技基準」「施設基準」「人事体制・組織運営基準」「法務基準」「財務基準」の5項目があり、それぞれの項目にA、B、Cの等級を持つ基準があります。Aは必須で達成しない場合はライセンスが与えられず、Bは必須だけれども達成しない場合は制裁が加えられるもののライセンスが交付され、Cは達成が推奨される内容です。
日本はAFCのライセンスと同程度か、それ以上の基準を各クラブに求めることで、より一層の内容の充実を図ろうとしています。ですからAFCの定めるA等級基準の数よりも日本が求める数のほうが多くなっています。特に、「人事体制・組織運営基準」はAFCのA等級が12に対して日本は18、「財務基準」は4に対して7とより厳しいと言えるでしょう。
それぞれの基準の内容については、きっと来週の専門誌がバッチリ掲載してくると思いますので、そちらをご覧ください。そして、そのライセンス基準をクリアしなければ、たとえその年にJ1だったとしても、翌年はJリーグ外でプレーしなければなりません。そしてJ2のチームはJ1のライセンスを持たない限り、成績がどうであれJ1に昇格できません。
基準を満たすためには投資が必要になってきますが、その経費が大きくなると財務体質を弱くして、結果的に基準を満たせなくなってしまいます。バランスが難しいけれど、でもそれって企業経営と同じですよね。
ただ、たとえば財務基準の適用には猶予があります。3期連続で純損失を計上したクラブにはJライセンスが交付されないのですが、2012年から3年、つまり2014年の決算までで判断するのです。というあたりからは、このライセンス制度というのが、決して誰かを切り捨てるためのものではなく、みんなで体力を強化したり競技観戦の快適さを向上させたりという意図があるのだろうと読んで取れます。
そのため、曖昧な部分も残っています。結局最後に決めるのは人間だという部分があるのは、僕は評価していいのではないかと思います。
ただし、気になることももちろんあります。というのが、こういう制度ができてしまった以上、この制度の精神がどこにあるのかということが常に明確にされていないと、やはりどうしても「排除のための理論」と取られてしまう可能性があると思うのです。
たとえば、今回の規約の中にもスタジアムの要件が書かれています。ですが、Jリーグができるとき、あるいはJリーグ参加のためにスタジアムを作った自治体とすれば、「作ったときにJリーグのいうことを聞いたのに、なぜまだ償還できていない今、さらに厳しい基準を押しつけられるのか」という不満は出てくるはずです。そして、「Jリーグは弱小チーム、あるいはこの地域を切り捨てようとしている」と取られかねません。
そしてもし、何か前例ができてしまったら、その前例に引っ張られてしまうというのが日本の社会のあり方になってしまっていると思います。Jバブルの頃と現在ではJリーグのいろいろな運用を代えてしかるべきなのに、そういう柔軟な対応は日本社会では難しくなっています。だから、もしそれでどこかが排除されたり、あるいは救済されたり、という中で、法の精神がないがしろにされかねません。
なので、このクラブライセンスをなぜ設けたかという精神こそ、内容とともに広く告知されなければならないと思います。メディア向きに配られた資料には、その「ライセンスの意義」が書かれていました。その詳細もきっと専門誌が書いてくれることでしょう。だからみなさん、ぜひその部分を読んでみてください。……と専門誌に記事にしておくれという、ちょっとお願いなのでした。