横浜FMvs福岡 強いのか弱いのかわからない両チーム
ここまで勝点のない福岡が見事な2ゴールを挙げて前半リードします。1点目は城後が田中とのワンツーから中央突破、2点目は左サイドを松浦、キムで崩して折り返すと、城後がたたき込みました。両得点とも横浜FMのマークが誰もつけない、きれいな形の得点でした。試合後、横浜FMには「相手が最下位のチームだという油断があった」と反省の弁を口にする選手もいましたが、それでも福岡のゴールが美しかったのには変わりありません。
福岡の篠田監督はハーフタイムに、後半横浜FMが猛攻を仕掛けてくるので注意するよう指示を出したそうです。その予想どおり、後半開始早々から横浜FMは攻撃に出て、右サイドの小林からのパスを大黒がダイレクトのボレーで渡邉につなぎ、渡邉はヘディングでGKの頭上をループで抜いて1点を奪いました。「(クロスバーに当たって入ったのは)倒れていて見ていなかった」という渡邉でしたが、大黒からのダイレクトのパスは「練習でもやっているのでわかっていた」と、目は合わなくても気持ちのコンタクトがあったということでした。
2点差は難しいという言葉をサッカーではよく聞きます。1点を返されると、負けているほうに勢いがついて逆転されるという意味です。横浜FMの選手もそんなムードになったでしょうし、福岡の選手もこの言葉をよく知っていて危機感を募らせたでしょう。そのお互いの気持ちがぶつかり合うような、この試合の命運を分ける50分台の攻防が始まります。
51分、福岡の城後が右サイドを突破し、中央に走ってきた鈴木が合わせますがゴール右に外れます。52分、またも右から城後がペナルティエリアに進入しますが、これはGK飯倉が防ぎました。横浜FMの木村監督は56分、大黒に代えて小野を投入します。その直後の57分、岡本の突破からシュートを放ちますがこれもGK飯倉の正面でした。
福岡がこの3回のチャンスを決められなかったこと、そして木村監督のこの交代が勝敗の分かれ道でした。この後、福岡の足が止まり始め、フレッシュな小野が生き生きと輝き始めます。小野は58分、64分と決定機を演出し、ついに77分、ペナルティエリア内の谷口にパス、谷口のポストプレーからゴール右隅に狙い澄ましたシュートを滑り込ませました。さらに81分、右サイド兵藤のシュートがこぼれるところをゴール左の角度が小さいところから思い切りよく蹴り込み、ついに逆転に成功しました。
2点取られて3点を取って逆転するって、そう言えば木村監督が現役で、攻撃力が売り物だった日産自動車時代にありました。1985年9月6日、場所は三ツ沢で相手は住友金属だったかと思います。当時のJSLは秋春制で——なんて、そういう話はまた別の機会に。
この試合で気になったのは、前半の2失点の際に谷口が大きく飛び出していたことでした。1失点目はセンターサークルで中村が城後にチャージするのですがかわされます。本来ならあそこでアタックするのは谷口の役で、谷口の守備能力ならファウルにはなっても失点にはならなかったのではないかと思ったのです。
ハーフタイムに谷口は木村監督から「もっと攻撃しろ」と言われたそうです。そして谷口は「これはやるしかない」と思ったということでした。栗原に聞いても「上がっていくのが谷口の特長だから、それをなくさせてはもったいない」という言葉が返ってきました。だから谷口は生き生きとしています。いいところをつなぎ合わせるのは難しいでしょうが、少なくとも谷口に関して横浜FMはそれを実践しようとしています。あとは早く谷口にゴールがほしいところでしょう。
それにしても横浜FMから美しいゴールを2回も奪ってみせる福岡、2点差を逆転する横浜FMとなかなか強い気がします。あれ? でもよく考えると逆転負けのチームと2点も先に失点してしまうチームとも言えます。これって強いのか、弱いのか……。