取るのが悲しいこの時期の電話
この時期、電話がかかってくるとドキドキします。
特に知り合いの選手からの電話だと、一瞬覚悟を決めてから出ます。
ほとんどの電話は「実は……」というところから話が急展開します。
来季の契約を結ぶかどうか、クラブは2ヶ月前に選手に通告しなければならず、その期限が11月末であることが多いのです。
10年前、ある選手がゼロ提示を受けたその日に初めて会いました。その時集まった4人の中では一番有名だったにもかかわらず、彼は一番年下ということで、せっせとみんなの分のお酒を注ぎ、料理を注文し、話題に気を使って何とか場の雰囲気が落ちないようにしていました。自分が職を失った日に、他人のことにそこまで気を使うことができる彼の姿は強烈に胸に刻まれました。
10年経ち、今年の彼は負傷が長引き、シーズン中から「せっかく残してくれた監督に申し訳ない。もう引退するしかない」と嘆いていました。そして高校の先輩でもある監督が途中解任になったとき、思い切り取り乱して監督に電話でずっと謝ったそうです。
今日会った彼は10年前のあの日と同じように、場の雰囲気を落とさないように気を使いながら話をしていました。 ですが、「もしもどこか声をかけてくれるならまだやりたい。何度か地獄を見てきました。だからへこたれません」と、最後は前を向いて話をしてくれました。
きっとそのセリフは彼のことを心配しているこちらを気づかって出た言葉じゃない。サッカーに取りつかれている彼の心の叫びなのだと思います。
頑張れ、船越優蔵。 僕はまだ君の姿を見ていたい。