前園選手に対する「全盛期」という不躾な質問

ビーチサッカー日本代表、試合のクローザーとして活躍した前園選手も元気に帰国しました。いつものおしゃれな格好じゃなくて、みんなと同じジャージ姿です。ワールドカップ出場に笑顔がこぼれていました。

「やってきてよかったし、間違ってなかった。本当にラモスさんについてきてよかったと思います。最後一つになって上がってこれたし、ラモスさんから日本を変えようって。本当は(準決勝まで)もう少しだったのですけど。またチャレンジしたいという気持ちが心に残っています」
——ビーチサッカーの前園真聖の全盛期はこれから?
「ははは。僕は素人に近かったので、向こうにいる間は他の試合も観て。日本はこれくらいしか練習する時間もない中であそこまでできたのだから、もっと強くなっていくでしょうし、これから環境を変えていくというのも大事だと思います。そうでないと厳しいんじゃないかというのは感じました。それはアジア予選でもバーレーンとかUAEとか何カ月も環境を整えながらやってきていたので、このままじゃ差が開くと感じました。これから先はビーチサッカーに何かできればと思います」
——それにしても惜しかった。
「本当にもう少しだったんですよ。ラモスさんからファウルをするなと言われていて、それは選手もみんな分かっていて、でもそこで起きちゃったし、FKはバウンドが変わって入っちゃうし、それがビーチの怖さですよ。ファウルは疲れているからやっちゃうんですよね」
——次回は前園選手がその時間にピッチでみんなを落ち着かせてくれれば。
「また次の目標がみんなできたと思います」
——山内選手が夢のような時間だったということでした。
「あいつは、本当に、普通できないですからね。その中であいつが自分を普通の選手として扱ってくださいって言い出して、それでチームがまた一丸となったし。あいつらまだ若いから、いい経験になったと思います」
——山内選手は今でこそストライカーですけどビーチサッカーを始める前はDFでした。

「そうなんですか? あいつがホント、ケガがなくていっていれば、本当に分からなかったと思いますよ」

途中で「前園真聖の全盛期は」と聞いたのには訳があります。
実は前園選手と初めて1対1で話をしたのは、前園選手のJリーガー時代、湘南を辞めたときでした。その時、私は話の中で不躾にも聞いてみました。
——前園真聖の全盛期は終わったと思われているかもしれません。前園選手は自分自身をみてそう判断なさいますか?

それに対して前園選手は怒るでもなく、しっかりと答えてくれました。
「いいえ、そう思ってません。というのも、僕はここ数年ずっとケガに悩まされていて、それをだましながらプレーしていたので、自分でも満足できるプレーができませんでした。でも、今回はちゃんと治療しているのできっとまたいいプレーができるようになると思います」

 そのシーズン、前園選手は東京Vに入団しました。そして質問に対する答えの言葉通り、鋭いドリブルと突破を見せてくれていました。またちょうど1対1で話をする機会があったので聞いてみました。
——確かに切れが戻ってきました。また全盛期がやって来る?

「あとは得点だけです。ゴールがあればもう1ランク上がれる。今はそれが分かります」

その次の試合、ゴール前に詰めた前園選手の前にボールが転がってきました。

すかさず勇敢なGKが体を張って飛び出してきます。ボールは前園選手が足を伸ばし切れば触れる位置でした。ですがGKの飛び出しも鋭く、きっと伸ばした足をそのままにしてスライディングすれば、GKの腹にぐさりと突き刺さることでしょう。だからと言ってボールに触った後、足を踏ん張れば芝に引っかかった状態になり、今度は前園選手が危険です。

どちらにしても、どちらかの選手のケガは避けられそうにない。みんながハッとした瞬間、前園選手は川口選手の腹を蹴らないように足を踏ん張りました。足首が不自然に曲がります。前園選手は立ち上がれず、すぐにドクターがピッチに向かいました。重症なのは明らか。その時、前園選手は左足関節骨折というケガを負ってしまいました。

結局、前園2度目の全盛期を告げることになるはずのそのゴールが、彼のJリーグ最後のゴールとなってしまいました。その後前園選手は韓国で復活したものの、現役として日本の芝を踏むことはありませんでした。

ですが、今度こそ前園選手の2度目の全盛期がやってきそうです。芝と砂の違いはあるけれど、厳しい顔をしてプレーする前園選手はやはり風格があります。そして何より青いユニフォームは彼にぴったりでした。

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