朝日山は波乱の象徴か

アジアカップに関することではなく、サガントスに関する考察です。

1月に入り、豊田陽平選手、林彰洋選手と代表選手が契約更改しました。安田理大選手や坂井達弥選手が(坂井選手は期限付ながら)いなくなったので、ほっとした方も多かったと思います。ちょっと話はそれますが、金民友選手も兵役の問題を抱えながらまだ鳥栖でプレーしてくれるのには大感謝しているファンも多いのではないでしょうか。

ところが、この豊田選手と林選手の更改についてのコメントに、異口同音に「朝日山の問題が無ければもっとはやく契約していた」というのがあります。この「朝日山の問題」とは何か。

オーストラリアで合宿中の豊田選手に意図を聞いたところ、「真意を理解してもらおうと思って書いたのではない」 という答えでした。ですが、1月の鳥栖の練習スケジュールが発表されて、「これは」と思うことがあります。

ところでまず「朝日山」とは。まぁ簡単にいえば、鳥栖のハードトレーニングの象徴のようなものです。毎年、急角度の石段を選手たちが登っていく姿が報道されていました。去年でいえば始動から4日目に「朝日山」のクロスカントリーがメニューになっており、1月中に3回、朝日山のクロスカントリーが練習にありました。松本育夫監督の時代から始まったと思うのですが、これは日本に帰らないと正確な資料がないので、間違ってたらごめんなさい。

ところが、この「朝日山」が今年のメニューにはありません。僕は豊田選手や林選手のコメントが「鳥栖の伝統を守らなくていいのか」と言っているように思えます。

鳥栖の選手はJ1の中で、決してうまいほうではありません。ですが、強靱な体力と走力をベースにして、90分間味方のために走り回ってJ1に昇格し、ここまで戦ってきました。きっと選手たちは苦しくなったときに、「朝日山にも耐えた」という思いを持っているのだと思います。ところが、その「朝日山」がない。

森下新監督に対して、「これまでの自分たちの戦いを見てくれているのか」という疑問を持ったのかもしれません。せっかくチームのカラーが確立しているのに、なぜ壊そうとするのかと感じているのかもしれないと思います。

これを逆に監督目線から見ると、マンガの「ジャイアント・キリング」になるのでしょう。ここからさらに一歩前に進もうと思ったら、たとえ伝統であったり象徴であったりしても使わないという気持ちなのかもしれません。「ジャイアント・キリング」と鳥栖との違いは、鳥栖はこれまでの戦い方で去年は一時首位に立っていたし、最後まで上位争いを続けたということです。選手の中には成功体験として刷り込まれているはずですから、そこから大きく変えることは、迷ったときに立ち返る場所を無くしてしまうように思えるでしょう。

人には未来が見えないのだから、監督が正しいか、選手たちが正しいか、今はわかりません。ですが、選手と監督がこういう緊張感をもってシーズンを始めるというのは、エキサイティングでもありリスキーでもあります。プロですから、勝てばまとまるでしょうし、勝たなければチームがバラバラになります。そんな開幕戦の相手が、じっくりと自分の色にチームを作り上げてきた柳下正明監督の新潟というのは、かなり不気味だと思います。

 

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