【W杯】すごい緊張感が走っていたのでしょう
ドミトリーに戻ってみると、ロビーに係の人が待っていました。そしてウェブサイトの管理人を呼んでいるから、と言います。
やってきた管理人は背が高く、大人しそうな男性と、太っていて背の低い気の強そうな女性。Google翻訳を介して交渉です。女性はずっとポルトガル語でまくし立てて、とにかく払えの一点張り。あまりにぎゃあぎゃあ言ってくるので、こっちも最初は丁寧に対応していたのですが面倒くさくなって、関西弁風の言葉にしました。
「何ゆうてんねん。そっちがこの値段でええわって言うたんやんか」
「アホか。そんなんギャアギャア言っても払わへんて」
「ええ加減にせんかい」
怒鳴りはしませんでしたが、延々とこんな会話が続いていきました。
ときどき男性が絡んできます。どうやら女性が強気に出て、男性が妥協を探る役割のよう。しばらくすると女性が「600レアル(約3万円)でどう?」と言い出します。だけど、女性が強気な役と言うことは、ここで折れてはダメと言うことでしょう。
「ノー、ノー、ノー、ノー」
そう言うと女性はますますエキサイトして(そう見えるようにして?)怒鳴ってきました。しばらくすると事態を見かねたコロンビアの男性が「通訳しようか」と申し出てくれました。さすがにポルトガル語がわかる男性が入ると女性も大人しくなったのですが、それでも強気な姿勢は変わりませんでした。
男性がGoogle翻訳でラップトップ上に英文を表示し、持ってきます。
「我々のシステムの問題で、あなたにはご迷惑をおかけしました。オーナーの言った値段は団体客用の値段で、個人のインターネット用の値段ではありません。それなので残りを払っていただきたいのです。これはあなたに名誉ある妥協をお願いしているということです」
そこまでハッキリ認めて、しかもネゴシエーション役がそう言ってきたのなら、そろそろ落し所を探さなければならないでしょう。
「そうやってハッキリ認めたのなら、こちらも考えないことはない。だが減額がほしい」
「ということは、名誉ある妥協はしてもらえないということですか?」
「君たちの妥協額はいくらだ?」
「600レアル(約3万円)でお願いできれば」
「500レアル(約2万5000円)。今、300レアル(約1万5000円)払って、残りはあとで払う」
本当は400レアル(約2万円)としたかったのですが、そうすると明日空港までの交通手段を手配してもらえないかと思い、相手にも「少し得した」と思わせるような値段にしておきました。まぁ、最初は1200レアル(約6万円)を覚悟していたので、トータルで900レアル(約4万5000円)に収まったからよしとしました。
それまで激しいやり取りに隠れていたドミトリーの係員が現れて、すごく申し訳なさそうな顔をして謝ります。いいんだよ、と肩を抱いて「アミーゴ」と言うと、ドミトリーのみんなも心配していたのでしょう。次々に集まってきて、なぜかみんなで「ハポン!」「コロンビア!」「ブラジル!」の合唱になり、建物の表に出て写真撮影大会です。
激しかったけれど、押されっぱなしにならずにすんだのは、日本で怒りっぽいブラジル出身の方といつも話しているからかもしれません(笑)。さぁ、すっきりして試合、試合!!