【W杯】ビザ取得も一苦労……そこで見たツンセツ
さて、オンラインの書類も作ったことですから、さっそく申請に行ってきますか!
ということで、ブラジル大使館を探してやってきました。場所は外苑前から歩いて5分。ちょっと狭い道を入りますが、大通りから折れてすぐに、
ブラジルの旗が見えました。
人影がほとんどありません。なぜ? 今はビザ取得でみんな詰めかけているのではないの?
入ろうとすると、警備員さんが「あ~、それ違うんですよ」とのこと。ビザの申請は五反田のブラジル領事館で行っているとのことでした。
調べてみると、大使館は「大使がいて外交活動を行うところ」、領事館は 「領事がいて外交事務や広報などを行うところ」ということみたいです。
この後の予定もあったのですが、せっかく書類を持っているのだからと五反田に足を運びました。
五反田東口を出て、横断歩道をわたるとすぐ目の前に!
もしかしてここ?
パッと見たらブラジル料理屋さんかと思いますが、どうやらこのビルの一角が領事館のようです。
中に入ったらビックリ。きれいなオフィスできちんとしたブースがあり、銀行のよう。番号カードをもらって待ちます。ワールドカップでブラジルに行く人向けにはブースが3つ用意されていました。
ということからもわかるように、人で溢れています。ざっと30人~40人はいたでしょうか。僕の受付番号は545番で、12番目。さくっと出せれば、次の予定に間に合います。
ところが……。どうやら窓口ではみんな苦労している模様。チケットの所在や現地での滞在先、電話番号などきちんと証明できないと受け付けてもらえません。1人約5分ぐらいかかっています。
これまでいろいろな国のビザを申請してきましたが、これは少しビックリ。すごく丁寧というか、几帳面というか——。僕のブラジル人のイメージは、もう少し鷹揚というか、時間に遅れてくるというか、遅れてきても僕が起こさなかったのがいけないと怒り出したりとか、最初に「お前と話すことはないよ!」と怒ったりとか、何か質問しても「どうでもいいよ!」とぷいと外を向いたりとか、ふざけてないのに「ふざけんじゃないよ!」と言われたりとか……。
さすが2億人も人口がいる国だけあって、いろいろな側面があり、いろいろな方がいるようです。 ということで、きっちり1時間待ったところで窓口へ。
「こんにちは」と笑いかけても、窓口の女性は「はい」とにこりともしません。
「これが申請書です。これは行き帰りの飛行機の予約の明細で、他にFIFAからの承認のメールをプリントアウトしてきました」
「え? これだけですか?」
「と言いますと?」
「FIFAからは、こんな書類も届いているはずですけどね」
と見せられたのが、他の報道陣が一緒に持ってきている書類。え? そんなのあったっけ?
「えっと……探してみます」
「じゃあ見つかったら声をかけてください。番号札を取る必要はありませんから」
ここまで女性に笑顔なし。でも番号札をまた取ることになったら、それで1時間待ちでしょうからちょっとホッとしました。
iPhoneで過去のメールをずっと引っ張り出し、確認します。しばらくすると心配になってきました。FIFAから承認が下りても、大会に申し込んでいなければ取材はできません。しかも大会の取材申請は昨日まで。もしかして、申請を忘れてしまっていて、みんなに来ている書類が届いていないのじゃないか——。冷や汗が流れます。たぶん、あの空間にいた人の中で僕が一番焦っていたと思います。
どうすれば申請したかどうか確認できるか。リモートでPCに接続し、そこから確認するという手を考えたのですが、あいにくPCはハードディスクの入れ替え中。コピーの真っ最中でアクセスできません。しばらくいろいろな試行錯誤をくり返した後、iPhoneのブラウザでFIFAのメディアページにアクセスできました。調べてみると、Brazil World Cupのページで……承認されている! はぁ、ほっと一息。
ということは、僕にも同じ書類が来ているはずです。またiPhoneで過去のメールを探します。すると、プリントアウトしたメールに添付書類があり、どうやらそれが証明書のようでした。証明書はポルトガル語と英語の2種類が添付されていて、僕はポルトガル語の書類を見て「意味わかんな~い」とほったらかしにしたのが間違いだったようです。
いそいで窓口に行き、「添付書類がありました!」と告げました。この時点でもう11時50分。申請には残り10分しかありません。女性はiPhoneに表示した書類をちらりと見て一言。
「そのプリントアウトが必要です。 プリントして持ってきてください」
「ということは、今日は時間から言って受け付けてもらえませんね……」
「待ってます。近くのインターネットカフェで印刷できるでしょう」
女性に笑顔はありません。すぐ行ってこい、ということだと思い、近くのインターネットカフェに猛ダッシュ。入って2分でプリントし、すぐに飛び出します。
「持ってきました!」
と窓口に行くと、すぐに受け付けてくれました。やれやれこれで一安心。ただ、周りを見るとまだ申請の人がずらりといて、混雑は続いているようです。
「本当にありがとうございました」
「はい」
満面の笑みで言ったのですが、窓口の人は相変わらず無表情。ツンツンしているように見えて実は親切。ツンセツって、ブラジルはなかなか奥が深そうです。