川崎vs神戸 川崎にあのころの静岡の香りを感じつつ……
1日遅れて開幕したJ1、川崎vs神戸。ACLで一足先にシーズンをスタートした川崎には、試合勘を取り戻したメリットと疲労のデメリットの天秤がどちらに振れるかというポイントがありました。一方の神戸はいつものことながら主軸となるべき選手が入れ代わり、チーム関係者も「やってみなければわからない」という布陣。
こつこつと積み上げて、最後に優勝を目指そうという形が一般的だと思いますが、神戸の場合は一発当たれば一気に上まで行けるというチーム作りにも見えます。だけど、はたして神戸の方法論が間違いだと言い切れるかというと、資金力さえあればあながちそうではないのかもしれません。
そう思わせるくらい、いきなり神戸が攻め込みます。開始早々から立て続けにチャンスを作ると、18分、CKからシンプリシオが決めて神戸が先制点を挙げました。
ですがホームの川崎もすぐに反撃。19分、大島選手のパスに合わせて飛び出した小林選手が同点ゴールを決めます。このゴールは事前に2人で打ち合わせしていたとおりだったとのこと。小林選手は「昨季の最後はチャンスを作ってもゴールがなかなか決まらず、今季は早い時期に1点取れたので気が楽になりました」と試合後に語っていました。
28分、抜け出した中村選手が追加点を決めて川崎が2-1とします。こうなるとホームの川崎がすっかりペースを握りました。ボランチに入った大島選手がボールのつなぎの部分にうまく入り、川崎のリズムを作ります。ACLの貴州人和戦では大久保選手から「もっと前に上がってきてフォーローしないと点が取れない」という要求があり、この日はACLの時よりも積極的に飛び出していくようになっていました。大島選手はボールコントロールとボディコントロールが素晴らしく、中村選手がこなしてきた役割の一部を担っています。昔、中村選手が加入したころに今野選手の役割の一部を置き換えていたのを思い出します。あとは自らフィニッシュできるようになれば、川崎のアラン・ジレス(古い!)になる気がします。
後半もずっと川崎ガボールを保持します。押しては引き、右を向いたかと思うと左に出るパスワークは、まるでアルディレス~ペリマン監督時代の清水のよう。ちょうどそのころ、専門誌の担当として清水を訪れていた僕にはとても静岡風のリズムに思えました。
ボールは失わないし、華麗で美しいのは当時の清水でよく見た風景で、さらに似ていたのはフィニッシュがもどかしいこと。うまいから、というのもあるのですが、「そこで勝負か!」と思ったときになかなか強引には進みません。結果的にシュートはたくさん打っているのですが、ゴリゴリとゴールをこじ開けるというフィニッシュではありませんでした。ただ、これも静岡っぽいと言えば静岡っぽいかも。
この日の川崎には追加点を奪うという力強さはありませんでした。すると終了間際、守備の人数は足りていたのですが細いところを松村選手に抜かれて2-2。そのまま試合は終了しました。
川崎は先制されたわけですから、同点に追いついても御の字だったと言えるかもしれません。ただし、試合を支配している時間が非常に長く、そう考えると勝点2を落としたと言えるのではないでしょうか。神戸は試合が進むにつれコンビネーションができていない部分が散見され、どれくらいの実力があるのかよくわかりませんでした。ですが、昇格組と侮ることはできないのは間違いなさそうです。