湘南vs磐田 磐田は間に合うのか

試合の立ち上がり、磐田が見せた個人技はレベルの高いものでした。湘南がボールを奪いにいってもなかなか触れません。突っ込んでくる相手をいなし、機をうかがいます。

ところが、しばらくすると奇妙な膠着状態になりました。相変わらず磐田がボールを回すものの前に運べません。ボランチからなかなか前に進まず、最後は前線に向けて長いパスを放り込むようになってしまいました。 そのパスを奪って湘南が勢いよく攻め込もうとするのですが、アタッキングサードには入前に取り返されます。そして磐田がまた最終ラインに近いところでパスを回し始めます。

43分、CKから湘南の高山選手が狙ったシュートが前半の一番の見せ場でした。後半に入ると、その勢いのまま湘南が攻め込もうとしたところで、56分、まさかの退場劇がありました。磐田の縦パスに勢いよくペナルティエリアを飛び出したGKアレックス・サンターナ選手はボールをクリア。ところが拾われてシュートを狙われてしまいます。アレックス・サンターナ選手はペナルティエリアに戻りながら手を伸ばしてクリア。ところが、戻りきっていなかったのです。

副審のポジション取りが絶妙でした。プレーの直後に旗を揚げ主審を呼びます。湘南の選手が抗議しますが、もし誤診でもあの位置で判定されたら受け入れざるを得ないという場所での判定ですからどうしようもありません。

このFKを駒野選手が決めて磐田がリードします。まさかこの得点が伏線だったとは。湘南は3-4-2に変更しただけでなく、果敢に攻め込むようになりました。対する磐田は相変わらずなかなか前線にパスが供給されず、FW2人が孤立します。そのうち、磐田の足が止まり始めました。

すると、その隙を途中出場の梶川選手が突きました。長いドリブルで左サイドを切り崩し折り返すと、そこに待っていたのはウェリントン選手。これを決めて湘南が同点とします。梶川選手が出場したのが73分、ゴールが78分ですから、曺監督の采配が見事に的中したと言えるでしょう。

このまま試合が終わります。磐田は10人の相手に同点に追いつかれただけでなく、残留争いで自分のすぐ上の順位にいる相手に引き分け、勝点3を縮められず、順位を一つあげそこなったという試合になりました。

ウルグアイ戦に選ばれず、ザッケローニ監督が「復調しているが今回は選ばなかった」と言っていた前田選手が、どれくらい戻ってきているのかはこの試合ではよくわかりませんでした。3月のシュートを焦りすぎていた頃からはよくなっていたものの、とにかく前に丁寧なパスが出ないから、何かしようと思ってもできません。丁寧なポストプレーから2回のチャンスを作ったものの、シュートに結びつくパスは来ませんでした。味方のためにペナルティエリアを出てプレーすることが多く、一番シュート力のある選手がゴール前にいなければ得点の匂いは生まれません。鳥栖が豊田選手の良さを生かそうとサッカーを組み立てているのとは逆の姿に思えました。

川崎を率いていたころの関塚監督は、前線にジュニーニョなどがいたということもあるのでしょうが、非常に素早い攻めを構築していました。その意味では、この試合では関塚監督らしい形をあまり見ることができませんでした。もちろん選手が違うのでこうなったのでしょうし、関塚監督はじっくりとチームを変えていく監督だとも思っています。川崎に就任した当初は4バックを指向していたにも拘わらず、前任の石崎監督が採用していた3バックをそのまま生かし勝点を稼いでいきました。そして基礎をじっくり作った後に、満を持して4バックに移行しました。

ただ、見ていて心配になったのは、はたしてじっくり構築していって間に合うだろうか、ということです。去年の神戸で西野監督が途中就任し、職を失ったのと同じにならないだろうかと感じてしまいました。もっと現実的な、前田選手を生かした戦いもできるのでしょうし、まず今は勝点を稼いで安全圏に逃げることが大切で、そこから自分の色を出していっていいのではないか、と思います。関塚監督ですからきっと別の脱出経路も持っていて、そっちが近道なのかもしれませんが。

 


書き忘れの追記です。

もし関塚監督が同点ゴールに焦ったら、すぐに選手を交代させたことでしょう。ですが、交代は同点劇の4分後。もともと交代の早い監督だとは思いませんが、何か別の意図も持ちながら今指揮を執っているのではないかと思えます。 

でも関塚監督は秘密主義なのでなかなか検証できないんですけどね。昔、記者会見で「戦術的なことはお話しできません」と質問をはねつけられたこともあります。だけど、そうすりゃ何を聞けばいいのよ、という感じでもあるのですが。 

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