FC東京vs川崎 前半からは想像できない結末・あの方も取材に
前半を見る限り、川崎に勝つチャンスがあるだろうかという展開でした。FC東京は素早いパス回しの、パスの出しどころの精度が上がっており、開始早々から川崎陣内に攻め込みます。ミドルシュートあり、スルーパスへの飛び出しあり、クロスへのフィニッシュありといろいろな攻撃のバリエーションを見せました。川崎は14分、中村選手が山瀬選手とのワンツーから抜け出して決定機を迎えギリギリで外れたものの、チャンスの数は圧倒的にFC東京が上回っていました。
ハーフタイムに川崎は自分たちのやり方を再確認したということでした。その一つは、ブロックを作って守っていたように見えた前半の守備から、一度正しいポジションに引いたところから前に出てボールを奪うということ。 その確認がすぐに生きます。
46分、中盤で中村選手が素早くプレッシャーをかけてボールを奪うと、そこからつないで前線の楠神選手へ。楠神選手は抜け出すと相手DFをかわしてゴールに流し込みました。 「あそこまで何もしていなかったので焦っていました。(かわしたのは)かわさないとゴールに入らないんじゃないかと思ったから」(楠神選手)。
前半がうまくいっていたFC東京にとっては、まさかの出会い頭という感じだったでしょう。ここから約10分間の攻防がこの試合を決めました。前半、見事なパスワークで川崎を崩し続けていたFC東京は、まさかの失点に焦ります。 ボールコントロールが乱れ始め、前後のバランスも偏り始めました。
54分、FC東京がさらに焦ることになりました。中村選手のFKをジェシ選手がヘディングで合わせ、これがGK権田選手の頭上を越えてゴールに飛び込みました。 FC東京は必死に反撃するもののチグハグになります。パスも、前半は川崎の急所付近に出ていたものが、後半はせっかく崩しかけているのにゴール前から遠ざかるなど全体の意思もバラバラになってしまいました。
それでもFC東京は個人の力でチャンスを作ります。ルーカス選手のシュートがポストに当たるなど決定機をつくり、ついにはエジミウソン選手のシュートがゴールを割りますが、これが88分。その後のパワー溢れる攻守では得点が生まれず、結局川崎が2-1でFC東京を下しました。
試合後、FC東京の石川選手にじっくり話を聞くことができました。僕の一番の疑問は、先制点を奪われた時点でなぜ「落ち着け」とチーム全体をなだめることができなかったかということ。その役はベテランの石川選手が担うのか、という問いに「そのことについては僕もいま悩んでいます」ということでした(ただ、試合中に味方を怒鳴りつけている石川選手、というのを僕はあまり想像できないのですが)。
そしてもう1つ、17分に石川選手がルーカス選手のパスに抜け出したものの、シュートを打たなかった場面について聞きました。あの場面では思ったよりボールが縦に流れて、無理してシュートを打とうとすると左足への負担が大きすぎたため、足が振れなかったそうです。この点について聞いたとき、石川選手はとてももどかしそうでした。
さて、この試合にはこの方も来ていらっしゃいました。
サッカーマガジンの連載でもおなじみの加藤未央さん。ほぼ最後まで残って選手の話を聞くなど、取材熱心。海外サッカーもよくご覧になっているので、その比較の話などもおもしろく、この方にもいつまでも現場に来ていただきたいものです。
帰ろうとしていると川崎のサポーターの方々と、FC東京の運営の方が話している場面に遭遇しました。どうやらレーザーポインターでいたずらを仕掛けてきた人物がいたようです。そう言えば試合前やハーフタイムに珍しく川崎のサポーターが怒鳴っていました。
そんなバタバタしているときに、僕の顔を見かけて「ごめん、今挨拶できない」という合図をしてくださった小林さん。こんないい人と知り合いがもめるのはとても悲しい思いです。後ほど判明した犯人は中学生だった模様。この中学生が今回のことをしっかり反省しつつ、サッカーは嫌いにならいでいてほしいと思います。