川崎vs名古屋 今まで理解してきてくれた人たちなのですから
先週は川崎ファンから厳しいメールをいくつかいただきました。ホームでの勝率が落ちている(この試合の前までで4勝1分6敗)、優勝を狙うようなチームの完成度ではない、残留を狙わなければならない戦いぶりだ、なのになぜもっと厳しく書かないのか。そういう内容でした。
残留に関して言えば、J1リーグが18チームになってから、勝点35程度が残留ラインになっています。ということは、川崎はあと1勝すればほぼ大丈夫でしょう。そんな低い目標を達成しても……とお嘆きの方もいらっしゃると思いますが、監督が代わり、選手を入れ替えている段階で僕はいきなり優勝を狙うのは難しいと思っています。いろいろな監督から「チーム作りには3年かかる」という言葉を聞きますが、そういう意味では今年はまだ1年目の最初の最初です。
選手を入れ替えていることについての不満もあるようです。今季の最初にジュニーニョ選手も契約満了しましたし、田坂選手の代は田坂選手の移籍でみんないなくなりました。そして、監督は決してそう思っていなくても——僕は実際にそんなことを考える人ではないと思います——風間兄弟を使い、それまで試合に出ていた選手をベンチや期限付移籍に出したりすることで、邪推も生むことでしょう。もちろん監督もそれをわかっていて起用しているでしょうし、風間兄弟は大きなプレッシャーを受けているでしょう。
そんなスタンドのモヤモヤを吹き飛ばすには勝利が一番なのですが、いろいろなものをかなぐり捨てて勝点3を目ざしてきた名古屋を前にすると、まだまだ川崎は勝つことができませんでした。
名古屋の藤本選手は「連敗していたので、どうしても勝ちたかった。だからいつもと違って、7対3、いや8対2ぐらいで守備の意識を高く持っていました」とコメントしました。その言葉どおり、名古屋は重心が後ろにかかった戦いぶりで、中盤で中村選手をフリーにしてもゴール前を固めてきました。川崎は復帰した登里選手を左サイドにおいて幅広く攻めます。ただ、ゴール前の闘莉王選手を脅かすことはなかなかできません。
74分、ペナルティエリアに進出した金崎選手にパスが出ると、切れ味鋭いドリブルから金崎選手がゴールを決めます。その後、名古屋はがっちり守りました。システムこそ違うものの、2週間前の鳥栖を思い出させるほど守りを徹底します。そして川崎はまたも崩すことができず、そのまま0-1で試合が終わることになりました。
僕は頑固な監督というのが嫌いではありません。信念を持って物事に立ち向かうとき、揺れてはならない時期もあると思います。ただ、現状ではクラブがもう少し監督を支えてあげていいのではないでしょうか。そりゃ口では「タイトル」と言っていたかもしれませんが、今年の目標は何ができるようになることなのかとか、何を達成しなければならないと監督に要求しているのかとか、現時点での本当の部分をファンの方には説明しないと、結局成績だけが目標となってしまって非常に近視的なチーム作りになってしまうと思います。もちろんお金がたっぷりあれば一気にチームを作り上げられるのでしょうけれど、そういうクラブは今Jリーグにいませんから。
まだ1万9000人近いお客さんが等々力に足を運んでいます。ぜひこの人たちにわかりやすく、今何をしているのかクラブは説明してほしいと思います。これまでそういうクラブの狙いを理解してきてくれた川崎のファンなのですから。