横浜FCvs鳥栖を鳥栖目線で
昨季、アウェイで0-4、ホームで4-4と壮絶な戦いを見せた鳥栖と横浜FCの対戦で、鳥栖が3-1と完勝劇を見せました。
開始1分、試合は動きます。横浜FCが右サイドDFの柳沢を極端に上げてスタートし、その背後を鳥栖が突きました。左サイドで楔のパスを受けた野田がキープして國吉に渡し、國吉が右サイドを駆け上がってきた早坂に渡すと、横浜FCの守備ラインは出遅れ、早坂はそのままゴールに流し込みます(追記 DFに当たったようです)。
尹晶煥監督に聞いたところ、「あれは練習どおりの形」ということでした。岸野監督の戦術を分析した結果のゴールと言えるでしょう。岸野監督の強気の采配を知り尽くしている鳥栖ならではの狙いだったと思います。
さらに尹晶煥監督の狙いは的中します。トップに足の速い池田を置き、飯尾の背後を突こうという作戦が実ったのは22分。岡本のパスを野田がペナルティエリアの外でキープし、その間に池田が飛び出してGKと1対1を決めました。張り切りすぎて空回りする姿が、鳥栖フューチャーズのころのFW須又を彷彿とさせる池田でしたが、このときは与えられたミッションをしっかりこなしました。
横浜FCはしっかりボールをキープしてスルーパスを通そうとするのですが、DFからFWまでの距離が広がり、無理に入れたパスを狙われてしまいます。悪天候のせいでパスの精度が極端に落ちていたので、トップの藤田に単純なクロスを上げることも考えてよかったはずですが、一本調子のまま前半を終えてしまいました。
後半に入ると横浜FCが猛攻を仕掛けます。ところが攻撃のリズムが一定のままで、鳥栖は自らのミスに気をつければ崩されないという時間帯が続きました。
そして苦しい時間を凌ぎきった鳥栖が63分、FKからダメ押し点を入れて3-0。勝利を決定づけました。
横浜FCのムードが変わったのは70分でした。カズが投入されてゴール前に落ち着きが生まれます。また3点のリードに鳥栖の足も止まり始めました。
それでも横浜FCの攻撃が実ったのはアディショナルタイムに入ってから。カズの冷静なマイナスのパスを高地がシュートし、GKが弾いたボールを藤田が押し込んで横浜FCが意地を見せます。ですが反撃にはあまりに遅く、このまま試合は終了しました。もしもカズの投入がもう少し早ければ、試合の雰囲気は変えられたかもしれません。
ところで、僕がこの試合で目についたのは鳥栖のGK、室が何度かクロスにチャレンジして触れなかったこと。もちろん、他にすばらしいセーブを見せて勝利の立役者になったのですが、GKというポジションだけにミスが印象に残ります。この点について、高嵜コーチから印象的な話を聞きました。
身長181センチの室はGKとして決して大きなほうではありません。だから今まではクロスに対してなかなか出て行かなかった。開幕戦のFC東京との試合ではクロスを平山と競ってこぼしてしまい、決勝点を決められてしまいました。だけど今は出て行こうとしている。今までは出て行かないからミスが目立たなかったけれど、今はプレースタイルをもっと積極的に変えようとしているから、どうしてもミスが出てくる。だけどそれは進化の過程として必要なことだ、というのです。
鳥栖のゴール前について、今季はさらに楽しみになってきました。