清水vsG大阪 長谷川監督への質問

最終節は清水vsG大阪へ。スタジアムから切れない富士が見られる、絶好のサッカー日和です。

試合はG大阪が勝つべくして勝ちました。1点目も2点目もこぼれ球がG大阪の選手の前にこぼれるとは、サッカーの神様がG大阪に微笑んでいたとしか思えません。

後半は清水が怒濤の攻めを見せてひっくり返そうとします。肉体の接触が非常に多い、カップ戦の決勝のような試合になったのですが、清水の総攻撃の裏をついてG大阪が加点して清水の息の根を止めました。この非情さがG大阪の強さを現していると言ってもいいと思います。

試合後に明神選手、高木選手、安田選手が「接触が多くて、やっていて楽しい試合でした」と語ってくれました。記者席から見ているとケガをしないか心配になるほどだったのですが、ピッチの中ではそれも楽しいことのようでした。特に明神選手は小野選手とのマッチアップで非常に厳しいプレーがあった——お互いに顔を見て何か言っている場面もあったのですが——ことを「これが楽しいんですよ」とさわやかに話していました。小野選手は「いや、そんなにやりあってなかったし、もっとできました」と悔しさを一抹滲ませたのは、やはり大敗したからでしょう。

「静岡サッカーの特徴はサイド攻撃」とは長谷川監督がインタビューの際に言っていた台詞です。その言葉どおり、この日の清水は市川選手をずっと高い位置に置いて、アーリークロスから攻撃のきっかけを掴もうとしていました。その市川選手とマッチアップしていたのが橋本選手。この2人が非常に興味深い駆け引きを行っていたのがこの日のハイライトの一つだったと思います。その点について橋本選手に話を聞くと「大変でしたが、サイドを使われることはあっても、サイドチェンジだけはさせないようにと考えながらポジションを取っていました」とのこと。清水のサイドチェンジに対しての警戒をしっかり持っていたからこそ、G大阪は最後の場面で数的不利にならずにすんだのかもしれません。

試合後、長谷川監督と顔を合わせると一言。
「僕らしく負けて終わりました」

「だから次に勝ちたいと思えるんじゃないですか」と言うと、監督は「そうですね」と言って挨拶のためにピッチに出て行きました。その挨拶は、さばさばとしているように見える、いつもの長谷川監督どおりでした。その後の社長の挨拶は、止めていく選手のコールでよく聞き取れないくらいの騒ぎになっていましたが。 

記者会見では「この6年間で一番印象に残った試合は?」と聞いたところ、しばらく考えた後に「やっぱり負けた試合ですかね。鹿島に目の前で胴上げされたりとか、決勝戦で負けたということが多かったので」という答えでした。

これまで負けてスタジアムを出るときに長谷川監督を何度かつかまえて話を聞いたことがあります。そのたびに感心していたのは、最後に必ず「仕方がないです。次に頑張ります」とさばさばした一言を残していたことでした。

その達観したようなイメージから言えば、負け試合が強く記憶に残っているというのは不思議な感じがしたでしょう。ですが、今年のインタビューで、家に帰ってから思い出していつもずっと考え込んでいたという一面を聞くことができました。

あの明るい笑顔の下には常に苦悩があったのだ、と改めて思い起こさせてもらいました。だけど、その言葉に続いて、長谷川監督が言ったのは「まだ、パッとこれだという試合が思い浮かばないということは、まだまだやり残したことがたくさんあるということじゃないかと思っています」。はたしてやり残したことはピッチの上なのか、あるいは清水でのことなのか……。聞こうと思って記者会見の後に監督を追ったら、「思い浮かばずにすみません。次までに考えておきますね」と優しく言われて、聞くタイミングを逃してしまいました。

ロッカールームに去ろうとする監督に、それでも追いすがって一言聞きました。
「今年亡くなった清水のジャーナリスト、大場健司さんがこの場にいたら長谷川監督に何と言っていたと思いますか?」
長谷川監督は立ち止まり、小さく息を吐いて短く答えてくれました。
「そうですね、また毒づかれたかなぁ」

僕もこの日、大場さんがスタジアムにいたら毒づいていたかもしれないと思います。そして、彼ならきっとその後、天皇杯に頭を切り換えるように監督や選手たちとうまく話をしていたことでしょう。だけど大場さん、その点は今心配なさそうです。選手たちは目をギラギラさせたままバスに乗り込んでいましたから。もしかしたら、正月に天国で喜ばせてくれるかもしれませんよ。

 

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