ちょっと書き残しておきたい心の広さ
今年の取材の中でちょっと書き残しておきたいこと。
今年の取材シーンの中で特異な体験としては9月12日、鹿島vs川崎が残り16分で延期になったことでした。激しい降雨の中、続行することは選手に対して危険と考えた岡田正義主審に非難が集まりました。
その判断について岡田主審から説明があればもっとすっきりしたかもしれません。それまでのJリーグニュースではマッチコミッショナーの仕事の中に試合の中止の権限の大きさが謳われていたのに、その後は何も無し。また残り16分の再試合で、鹿島が最初のセットプレーからゴールを決めたことが、その後の鹿島の復活につながったのではないかという思いもありますが、あまり科学的な話ではないので、何とも結論づけられません。
ですが、書き残しておきたいのはそのことではなくて、その中断から2カ月前後経過した試合のときの話。
その日も雨でした。主審は岡田正義さん。試合後、取材スペースに降りていくと、そこにはびしょ濡れになって引き上げてくる審判団の姿がありました。
岡田主審には昔、雑誌のインタビューをさせていただいた縁で顔を覚えていただいています。この時も目があって、ちょっと会釈していただきました。
こんなとき、つい一言言ってしまうのが悪い癖なんです。自分としては好意を込めているつもりなのですが、そう受け取ってもらえないこともあります。
この日、口を突いて出てきた台詞は、
「岡田主審の時は雨ばっかりですね」
あとで聞くと周りの記者さんたちはちょっと緊張したそうです。鹿島vs清水を指しているのは明らかだったので、岡田主審がむっとするのではないかと。
岡田主審は、ニコッとして
「ホントですね。困っちゃいますよ」
と一言残して控え室に消えていきました。
正直に言えば、その岡田主審の心の広さに僕は救われました。周りの記者の方々も岡田主審の寛容さに触れ、ちょっと温かい心になっていらっしゃったようでした。
さりげない1シーン。でも忘れちゃいけないと思ってます。