前園選手に対する「全盛期」という不躾な質問
ビーチサッカー日本代表、試合のクローザーとして活躍した前園選手も元気に帰国しました。いつものおしゃれな格好じゃなくて、みんなと同じジャージ姿です。ワールドカップ出場に笑顔がこぼれていました。
「そうなんですか? あいつがホント、ケガがなくていっていれば、本当に分からなかったと思いますよ」
途中で「前園真聖の全盛期は」と聞いたのには訳があります。
実は前園選手と初めて1対1で話をしたのは、前園選手のJリーガー時代、湘南を辞めたときでした。その時、私は話の中で不躾にも聞いてみました。
——前園真聖の全盛期は終わったと思われているかもしれません。前園選手は自分自身をみてそう判断なさいますか?
それに対して前園選手は怒るでもなく、しっかりと答えてくれました。
「いいえ、そう思ってません。というのも、僕はここ数年ずっとケガに悩まされていて、それをだましながらプレーしていたので、自分でも満足できるプレーができませんでした。でも、今回はちゃんと治療しているのできっとまたいいプレーができるようになると思います」
そのシーズン、前園選手は東京Vに入団しました。そして質問に対する答えの言葉通り、鋭いドリブルと突破を見せてくれていました。またちょうど1対1で話をする機会があったので聞いてみました。
——確かに切れが戻ってきました。また全盛期がやって来る?
「あとは得点だけです。ゴールがあればもう1ランク上がれる。今はそれが分かります」
その次の試合、ゴール前に詰めた前園選手の前にボールが転がってきました。
すかさず勇敢なGKが体を張って飛び出してきます。ボールは前園選手が足を伸ばし切れば触れる位置でした。ですがGKの飛び出しも鋭く、きっと伸ばした足をそのままにしてスライディングすれば、GKの腹にぐさりと突き刺さることでしょう。だからと言ってボールに触った後、足を踏ん張れば芝に引っかかった状態になり、今度は前園選手が危険です。
どちらにしても、どちらかの選手のケガは避けられそうにない。みんながハッとした瞬間、前園選手は川口選手の腹を蹴らないように足を踏ん張りました。足首が不自然に曲がります。前園選手は立ち上がれず、すぐにドクターがピッチに向かいました。重症なのは明らか。その時、前園選手は左足関節骨折というケガを負ってしまいました。
結局、前園2度目の全盛期を告げることになるはずのそのゴールが、彼のJリーグ最後のゴールとなってしまいました。その後前園選手は韓国で復活したものの、現役として日本の芝を踏むことはありませんでした。
ですが、今度こそ前園選手の2度目の全盛期がやってきそうです。芝と砂の違いはあるけれど、厳しい顔をしてプレーする前園選手はやはり風格があります。そして何より青いユニフォームは彼にぴったりでした。