ポハンの微妙な盛り上がり
ソウル市内で熱狂のWBC日韓戦を見て、興奮しまくる韓国人を尻目に怒号飛び交うACLポハンvs川崎F戦へ??。という期待は、WBCの韓国が3点を挙げた回で何となくイヤな予感が漂い始め、日本が1点を返したときにほぼ終息し、ポハンでは消し飛んでしまった。
韓国人のJさんと待ち合わせて韓国料理の店に入ったのが12時30分。食事時でどの店も大きくドアが開かれ、WBCを大画面で移していることが強調されている。その中でも多いなモニターを2台設置して、時折道行く人がのぞき込んでいる店を選択した。
前日の韓国の新聞はイチローが見開きで紹介され(Jさんによればイチローは韓国を挑発する「話題の多い選手」ということらしい)ていた。もちろんこの日も紙面で大々的に両監督が取り上げられ、ダルビッシュのデータも入り、少なくとも紙面上では対決ムード満点だったのだ。
だけど韓国が先制点を取り、さらに追加点を取ったときの店内のムードは「おお、やったか」という程度。どよめきはしたが、大きく喜びを表す人はいない。そしてプレーが途切れると、さっさと食べて店を後にする。店の外で眺めている人も、次々に入れ替わりちょっと確認する程度だった。
ポハンのスタジアムでは、前日のFCソウルvsG大阪よりも寂しい風景が待っていた。約100人程度駆けつけた川崎Fのサポーターとホームのサポーターがほぼ同数だったのだ。試合後、川島は「うちのホームかと思うような雰囲気を作ってくれた」と感謝していたが、バックスタンド2階を埋めた軍人たちはもとより、1階の観客たちも声を上げることは少なかった。一番盛り上がったのは試合前にポハンの選手がサインボールを投げ入れるとき、というのでは選手も気の毒というものだ。
試合そのものは、内容も激しさもJリーグとはひと味違ったエンタテイメントになっていた。だが大会の盛り上がりということに関して、この試合を救ったのは川崎Fのサポーターたちだった。40名のオフィシャルサポーターツアーは売り切れ、熱心なサポーターが組んだツアーにも約30名が参加し、他にも単独で多くの人たちが彼の地を訪れていた。
彼らのいつもどおりの温かな応援が、ちょっとのんびりしたこの大会に似合っていた。だが、この程度の大会の盛り上がりでこの先も大丈夫なのだろうか。
韓国人のJさんは言う。「韓国では代表ということになると盛り上がる。だけどKリーグはまだまだ」。WBC韓国代表の盛り上がりについては、ほんの数時間の観察なので論評は差し控えよう。だがFCソウル、ポハンの試合や前後の町の様子を見る限り、クラブレベルでの盛り上がりにはまだ欠ける。
川崎Fのサポーター代表、Yさんは楽観視していた。「浦和が大勢のサポーターと一緒に相手の国に乗り込んでガツンと言わせたことはその後に大きく影響したと思います。これからは日本の他のクラブのサポーターも乗り込むことで、アジアの国を変えていけるでしょう。5年後が楽しみですよ」。はたして5年間、ちゃんと規模が確保できて、いつかCLと同じ価値を生み出すのか。先は遙かに遠いし、乗り越えなければならない山も険しい。