中国風日本語

何とかタイ戦を乗り切った岡田監督は東アジア選手権でチーム作りを進めようとした。1月の合宿が始まるまでは、これまで招集されていない選手を数名加えることも考えられていたようだったが、実際には1月の合宿に参加した選手だけになった。しかも通常なら基礎体力をつける時期の始動直後から実戦形式のトレーニングが続いたため、この東アジア選手権の前にけがでリタイアする選手が続出する。チーム作りのためには一日でも多く一緒にトレーニングをしたいはずが、スクランブル状態で挑むことになったのである。
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中華国際航空の便は9時発。チェックインが7時からだから、前日は成田近くのホテルに泊まらないと家からは間に合わない。だけどホテル代を合わせても他の航空会社を使うよりも安上がりだ。ホテルで朝6時に起きてすぐ空港に向かう。するともう列が伸びていた。混雑を予想して乗り込んだのだが、意外に空席がある。重慶までは7時間かかるが、一度上海で乗り換える。上海に着くと一度飛行機を降りて入国手続きを済ませるのだ。

上海でタラップを降りると案内の係員が立っていた。出しているプレートには「ご注意ください」と書いてあるあとに「東京からのお客様に従ってくれ」とある。誰だ、こんな変な言葉を教えたのは。しかも誰に従えばいいんだ。もしかして先頭で降りたオレか? オレが重責を担うのか! と思ったけど当然のように違った。

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ツアーガイドさんのような係員に従って上海のエアーターミナルをぐんぐん進む。エスカレータで下がったと思ったらまたすぐ登り。空港の裏側見学ツアーみたいな一団として歩き続ける。やっとのことで入国審査の窓口にたどり着き、にこやかな係員にスタンプを押してもらう。やれやれ、と一息つこうと椅子に座ったら係員がたちまちせかし始めた。

すぐに今来た道を逆に進む。乗り込むのは同じ飛行機だ。せっかく荷物を下ろしたのに。戻ってびっくり、席はもう殆ど埋まっていた。荷物を入れる場所を見つけるのにも苦労する。そして入国審査を終えた人たちが乗り込むとすぐに飛行機は離陸した。上海到着から出発まで約1時間。何か食べる暇もなかった。

上海から4時間、重慶に到着する。飛行機は満席だったけどエコノミーでも席はゆったりしていたので疲れは少ない。国際線ターミナルに到着したので、国内線ターミナルまで15分ほど歩いて行き、市内までのバスを探す。国際線のターミナルにはきれいなタクシーで溢れていたが、国内線のビルはぐっと庶民派のバスが並んでいた。待っているとすばらしい笑顔を浮かべて若い女性が寄ってきた。何かの売り込みだ。資本主義している。彼女は中国語が通じないとわかってすぐに離れていった。資本主義に徹しているなぁ。

市内までのバスがやってきた。最初に乗り込む。降りなければ行けない場所を指して運転手に教えてくれるようにお願いする。市内までバスだと約450円だ。

バスはすぐに高速に乗った。路肩に立って高速を走る車をみている人たちがいる。何をしているんだろうと思う暇もなく、彼らは片側2車線の高速道路を渡り始めた。止めて、止めてくれ、とこっちは焦っているのだけど、渡っているほうも運転しているほうも至って平気である。人がどんどん迫ってくると車がすっとスピードを落とす。もしこれでブレーキ壊れてたら大惨事になりそうだけど、そんなこと誰も心配してそうにない。

ベトナムの時は時速30キロぐらいで走っていたからまだ止まれるだろうという感じはあったけど、重慶ではきっと日本の高速並みのスピードは出ているはずだった。

そんな重慶スタイルに次第に感覚が慣れてきた。約50分走り、切り立った崖をつなぐ橋を渡ってバスがターミナルに着いた。一見普通のバス停だったが人が多いから見当がついたし、運転手もちゃんと目で合図を送ってくれた。
ターミナルから約10分歩いてモノレールの駅を目指す。切符はタッチ式、ホームにはずらりとモニターが並び、とてもモダンだ。日本の技術が生かされているようだ。

静かな走行音のモノレールがやってきた。中国では電車が来たら我先に乗車すると聞いていたが、こちらが順番を守ろうとすると、みんなしっかり並んでくる。大会が開かれているからかもしれないが、ルールの策定とその施策において中国は徹底していそうだ。そう言えば日本にいるとき、中国人の友人が「厳しく統制しないと、これだけ多くの国民が同じ方向を向こうとはしませんよ」と言っていた。

電車の中で携帯を使うのは他の国と一緒。日本では禁止や通話しないのがマナーだが、他の国ではそうでもない。むしろ携帯で話すより大声で会話している人もいたりするのだから、日本でもそろそろルールの見直しがあってもいいと思う。実際、重慶のモノレールの中で携帯を使っている人は騒がしくなかった。

運賃は約30円。ホテルの近くの地下鉄の出口から出る。ここまでは事前の調査どおり。おお、いつもトラブルを抱えつつ現地入りする私らしくない。と思ったら、肝心のホテルが見つからない。番地から言ってもここらであるのは間違いないのだけど、名前が見つからないのだ。他のホテルのドアマンにも聞いたけど埒があかない。結局1時間ほどうろうろして、ついに本屋の横に入り口を見つけた。今回は四つ星クラスのホテルだったはずが、あまり周囲の人たちに知られているようでもなかった。

ところがホテルの入り口は狭かったものの、宿泊した階の廊下は広々としており、立派な調度品が並んでいる。コートハウス風の作りになっていて上から太陽の光も注いでくる。これで日本のビジネスホテルより安いのだからすばらしい。部屋の中はさらにすごかった。日本のツインルーム以上の広さがある。机や椅子もアンティーク調。風呂はゆったりと足を伸ばすことができる大きさで、横のガラス棚にはちょっとした壺が飾ってあり、上から照明が光を注いでいる。しかもシャワー室はまた別にもある。ゴージャスな気分になる。
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フロントの女性もとても愛想がよくてホッとした。

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ロビーも超ゴージャス

ただ、しばらくしているとちょっとしたアラが見えてきた。まず照明が暗い。町の中にはこれでもかというくらい光が溢れているのに、なぜか暗い。風呂も実際に入ってみると、ガラス棚のカットが見えない部分で斜めになっていたり、壺も見えない部分の模様がゆがんでいたりなのだ。暗いのだけは困るので、近くのスーパーで約700円の卓上ライトを買ってきた。調度品については、この値段なのだからと納得した。これまでの経験から言えばとてもいいところだ。

ところでスーパーに行ったとき、白熱灯は売っていなかった。ほとんどがLED。LEDはさほど明るくないので、電気の消費を抑えようとしているのだろう。エコ? でも練習場の近くでは、夜になると大音量で北京五輪を讃えるように聞こえる歌を派手なネオン付きで流している。どこに資源をつぎ込むかという感覚は、日本と大きく違うようだった。

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