いい人柄を見た公式会見

11時30分から前日公式会見。オシム監督と鈴木啓太選手が出席。
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恒例の試合前日公式記者会見。オーストラリア戦ということで、オシム監督の緊張も高まっているようだ。ベトナム戦のときほど言葉に余裕がない。シニカルな口調に戻っている。

――フィジカルが強い相手に対してどんなプランがあるのですか?
「サッカーの質問と理解してお答えします。サッカーの質問がもっと出てほしいものです。アスリートとしての能力はオーストラリアのほうが高いのですが、それを挽回するのは簡単なことではありません。フィジカルだけではなくスキルやテクニックを兼ね備えた選手もいます。大変手ごわい相手です。特にファンやメディアが、対戦相手のデータばかりに注目する国の代表チームとしては、大変な仕事になると思います。すべてをいかに克服するかが重要なテーマとなるでしょう。我々も大きくてうまければ問題ないのでしょうが、大きいだけの選手ならなら足下が下手ですし、そういう選手はサッカーではなくレスリングをすればよいと思います。もっとも、レスリングの試合になったとしても、やはりオーストラリアの方が強いでしょう」

――日本のよさを去年のW杯以上に出せるという手ごたえはありますか?
「記者会見で聞かなくても普段から話している仲ではないですか。いつもの繰り返しになるのが残念です。私個人としては、その種の質問は私に聞かないでほしいと思います」

――昨年のオーストラリア戦で日本人は敗北にショックを受けました。選手も同じだと思います。そのときの影響は今の日本代表チームに残っていますか?
「1年間も、そのようなショックが続いていることのほうがショックです(笑)。そういうショックを乗り越えて、生き残ってください。でもその時ショックを感じた人は、ご自身に責任があると思った方がいいでしょう。対戦相手の情報をきちんと入手していなかったということだからです。オーストラリアにどのくらい、いい選手がいて、彼らがどんないいクラブでプレーしているかを考えれば、去年のW杯でもオーストラリアは簡単な相手ではなかったはずです」

「特にファンやメディアが、対戦相手のデータばかりに注目する国の代表チームとしては、大変な仕事になると思います」というのは、かなり微妙というか、何を言っているのかよく分からない話だった。

また、オーストラリアのメディアから「世界のサッカーの傾向についてどう考えるか」という質問が出たとき、オシム監督は「これはいい質問だ」と話し始めたが、それも単なる牽制としか思えない答えだった。

一方のオーストラリアも監督、キューウェル、ヴィドゥカに対して次々に質問が飛んだ。オーストラリアのラジオ局はストレートな質問をぶつける。
「監督、明日のシステムを教えてください。3-5-2ですか、4-4-2ですか、7-1-9ですか」
監督は笑いながら
「ここには日本人のプレスがたくさんいるから無理です」

オーストラリア報道陣から選手たちへの質問は
「中村俊がオーストラリアは戦いやすいといっているがどう思うか」
「中澤が3-0で日本が勝つといっているがどう思うか」
とかなり挑発的な言葉を並べていた。これにはびっくり。

いい人っぷりを発揮したのはヴィドゥカ。話すときにやたらマイクにくっつく。だからボコボコ音が割れる。声が大きすぎて拾えない音もある。するとまず笑いながら「音声さん、ちゃんと働けよ」と言い、さらに音が割れると「おい」とマイクを見つめた。すかさず報道陣から「近過ぎ!」という声が飛んで一件落着。

ヴィドゥカは回答のとき、「アー」「ユー・ノウー」とか、言葉の最後の母印を伸ばす。日本語で言うと「えー」とか「うー」とか「というかー」などの言葉入る。訳すとき心情的には「オイラは」って表現したくなるタイプ。

そのヴィドゥカが
「オーストラリアがW杯で日本に勝って何が変わったか」
という質問に対して
「思ったほどオーストラリアでサッカーが盛り上がらなかった」
と答え、とても悲しみが伝わってきた。

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