Gの辛さに友と泣く
試合に出ていない選手を中心に地元チームと練習試合。チーム全体のコンディションを合わせた。
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ついに来た。すごい勢いでGが来た。
現地の記者数人はすでに代表のスタッフから薬をもらっていたが、とうとう自分の番もやってきた。
ベトナムの暴走車よりも速いスピードで水分が体内を駆け抜けて行く。
今回は長丁場なので食事には十分注意をし、露店には入らないし生野菜も氷も控えていた。
だが何が悪かったのだろう。日本代表が決勝トーナメントに進出したから緊張がちょっと切れたのか。あるいはスタジアムの記者室に用意してあった水が悪かったのか。ともかく薬を飲んで今日はばったり。こんなに休んだのはハノイ入りして初めてだ。
G止めの薬を飲んで練習場に出かける。途中一回来た波を凌いで帰り着いた。今日も凄く戦っている気分を味わえた。帰り道のスーパーで栄養剤を探す。見つかったのは「夜のお伴のレッドブル」。でも本物かどうか分からない。飲んだらこの前飲んだ「リポビタン」と同じ味だった。
まむしドリンクみたいなもんですな、レッドブル。そのベトナム版。正規モノかどうかは分かりません。カフェインはたっぷり入ってました。
夜、何とか痛みが収まってきたので食べ物を探して1階へ。パンが売ってあったラウンジには、夜と言うことでもうビールしかない。仕方がないので、量の多いおつまみを目当てにビールを飲む。
するとそこに顔見知りのカタール人が来た。すごくカリカリしている。負けたからだろうか。
おつまみを入れた皿は別の人間が使っていたと店員に激怒した。持ってきたものを下げさせる。日頃彼の温厚な姿しか見ていなかったのでびっくりした。
店員を呼んで彼がキャンセルしたビールをもらう。そして彼に話しかけた。
「あいつらはオレをだまそうとした。人の食べかけをよこしたんだ」
店員に聞く。
「どうなの?」
「戻ってきたおつまみは一緒にして出してます」
「新しい缶はある?」
「あります」
「じゃあ、それを開けてそこからおつまみを出して」
そうやって目の前で新しい皿に豆を入れさせた。
彼はその一部始終を見ていて、まだ文句を言っている。
「これ新しいから俺を信じろ。友情だろ?」
彼はちょっとだけぶつくさ言って、それからやっとぽりぽり食べ始めた。
「本当は何があったんだよ」
「長い旅は問題ない。でも食べ物が違い過ぎるんだ。こっちでは好きなものが食べられない」
分かる、分かるよ、Gな夜には。きっとお前もこのホテルの、固過ぎるトイレットペーパーに苦しんでるんだなぁ。